人物
山本五十六
連合艦隊司令長官
生没: 1884–1943
短期決戦を選びながら、決戦の条件(集中と秘匿)を自ら崩した司令長官。
日米の国力差を直視し、長期戦を避けるために短期決戦へ賭けた連合艦隊司令長官。ミッドウェー作戦は、米空母をおびき出して撃滅する「決戦」の枠組みだった。だが計画はアリューシャン陽動・上陸部隊・主力部隊・機動部隊に広く分かれ、決戦の場に戦力を集められない形になっていた。相手の行動を仮定に置いた日程は、その仮定が外れた瞬間に代替を持たなかった。
流儀――一回の決戦で戦争の形を決めようとする
山本は、日本が長期戦で米国の生産力に勝てないことを誰よりも理解していた。だからこそ短期決戦に賭ける。真珠湾もミッドウェーも、その一点で一貫している。時間が敵ならば、時間を使わない形で決着をつけるほかない、という論理である。
だがミッドウェーの作戦計画は、その論理に反して複雑だった。アリューシャンへの陽動、上陸部隊、主力戦艦部隊、機動部隊が広く分かれ、互いに支援できない。決戦を求めながら、決戦の場に戦力を集められない配置になっていた。
繰り返し現れる型
奇襲で始める
相手の準備が整う前に打つ。ただしこの型は、相手に読まれた瞬間に最大の弱点へ変わる。
複雑な同時進行
複数の部隊を離して配置し、相手の反応に応じて噛み合わせる。計画が正しく進む前提に依存し、狂いに弱い。
相手の行動を仮定に置く
米空母は出てこない、出てきても遅れる――という前提で日程を組んだ。前提が外れたときの代替案が薄い。
強みと限界
国力差を直視し、短期決戦という一貫した戦略を持っていた。
短期決戦は、一度失敗すると回復の手がない。負けたときの設計がない賭けだった。
航空主兵という新しい戦い方を推し進めた。
その空母戦力を、複雑な計画のなかで分散させた。思想と運用が噛み合っていない。
ミッドウェーに見る流儀
山本は決戦を求めたが、決戦の条件――戦力の集中と情報の秘匿――を自分で崩していた。望んだ形と、用意した形が違っていた。
山本五十六(連合艦隊司令長官)。作者不詳。Public Domain, via Wikimedia Commons
登場する事例