戦略・戦術ラボ Strategy & Tactics

事例

事例一覧

勝敗を分けた意思決定を構造に解剖した事例の一覧。古代・近代の会戦(カンナエ、アウステルリッツ)から現代の競争まで、表の出来事と裏の設計の二層で、なぜその勝敗になったのかを出典つき・忖度なしで読み解く。

街路樹ごしに見たサイゴンの米大使館。建物は無傷で、歩道を兵士と市民が行き来している
ベトナム戦争
テト攻勢:勝敗を判定していたのは、戦場にいない人だった

勝敗を判定するのは戦場にいる人ではない。それが誰かを取り違えると、勝っても負ける。

型:判定者の設計
戦術的には連合軍の勝利、戦略的には北ベトナムの勝利 読む →
上陸用舟艇の下ろされた斜路の向こうへ、腰まで水に浸かって海岸へ進む米軍兵士たち
第二次世界大戦・西部戦線
ノルマンディー上陸:本物のほうを、偽物に見せた

相手がすでに信じていることを裏づけて、本物を偽物に見せる。これが欺瞞の設計である。

型:欺瞞の設計
連合軍の上陸成功 読む →
雪をかぶった噴水の上で輪になって踊る子どもの彫刻と、その背後に焼け落ちた建物が並ぶ写真
独ソ戦(東部戦線)
スターリングラード攻防戦(1942–43年)

勝因は市街戦の粘りではなく、相手の最良の部隊をその強みが効かない場所に固定し、相手が自分では守っていない同盟国軍の側面で決着をつけた設計にある。

型:固執の設計
ソ連軍の決定的勝利(独第6軍は降伏) 読む →
飛行甲板を焼かれ、煙を上げて漂流する日本の空母「飛龍」を上空から撮った写真(1942年6月5日)
太平洋戦争
ミッドウェー海戦(1942年)

暗号解読による情報優位を、南雲機動部隊に「反撃隊を並べて出す連続時間」を与えない運用へ変換した会戦。命中ゼロで全滅した雷撃隊が、実は最も効いていた理由を構造から読む。

型:時間の設計
米側の決定的勝利 読む →
広い砂浜に、海へ向かって細長い列を作って立ち並ぶ無数の兵士たち
第二次世界大戦・西部戦線
ダンケルク:救い出したのは兵で、置いてきたのは軍である

負けるとき、作り直せるものを捨て、作り直せないものを持ち帰る。これが負け方の設計である。

型:負け方の設計
撤退作戦は成功、フランス戦役は敗北 読む →
塹壕の縁を越えて、白い地面へ向かって歩き出していくフランス兵たち
第一次世界大戦・西部戦線
ヴェルダン:争われたのは土地ではなく交換比である

相手を削ること自体を目的にすると、削る側も同じ機械に入る。止め方を書いていない設計は、設計者を最初に食う。

型:消耗の設計
ドイツの攻勢は目的を達せず、仏軍が失地の多くを奪回 読む →
馬上のウェリントンを中心に、負傷者や幕僚が入り乱れるワーテルローの戦いの大画面
ナポレオン戦争
ワーテルローの戦い(1815年)

勝敗を決めたのは戦場の戦術ではなく、前日にどちらの「第二の軍」が合流できる方向へ退いたか、という合流の設計である。

型:合流の設計
英蘭連合軍・プロイセン軍の決定的勝利 読む →
フランソワ・ジェラールが描いたアウステルリッツの戦い(戦勝を受けるナポレオンと将兵)
ナポレオン戦争
アウステルリッツの会戦――中央を「捨てさせた」誘導の設計

数で劣るナポレオンが勝てた理由は、中央突破の見事さではなく、敵に中央を捨てさせた誘導の設計にある。

型:空間の設計
フランスの決定的勝利 読む →
砲煙のなかに巨大な帆船の船体がそびえ、手前の海面に溺れる兵たちが描かれたターナーの油彩
ナポレオン戦争
トラファルガー海戦(1805年)

数で劣る英艦隊が1隻も失わずに勝った理由は、二列縦隊の突撃という形ではなく、戦列を切れば自分の指揮も切れることを前提に、事前に意図と既定動作を配っておいた設計にある。

型:指揮の設計
英艦隊の決定的勝利(ネルソンは戦死) 読む →
旗指物を掲げた無数の部隊が入り乱れて戦う関ヶ原合戦図屏風
戦国時代(日本)
関ヶ原の戦い(1600年)

戦う前に相手の戦力の一部を「動かない」状態にしておく、内応の設計である。数えるべきは人数ではなく、命令に従う人数だった。

型:内応の設計
東軍の決定的勝利 読む →
包囲の輪が縮まるなか、岩に座して死を待つ執政官パウルス(トランブル、1773年)
第二次ポエニ戦争
カンナエの戦い――数的優位を「罠」に変えた包囲殲滅

数で約2倍のローマが殲滅された理由は、両翼包囲という形ではなく、敵の密集と前進の勢いを動けない弱点へ反転させた設計にある。

型:勢いの吸収
カルタゴ(ハンニバル)の決定的勝利 読む →
軍旗を掲げた歩兵が塁壁へ突撃し、川では砲艦が砲撃している多色石版画
南北戦争
ヴィックスバーグ方面作戦(1863年)

目的を町から「町が塞いでいる線」に置き替え、そのために自分の補給線を一時的に捨てた、補給の設計である。

型:補給の設計
北軍の決定的勝利(南軍守備隊が降伏) 読む →
甲冑の兵が入り乱れ、射手が弓を引く場面を描いた15世紀の彩飾写本の細密画
百年戦争
アジンコートの戦い(1415年)

勝因は長弓の貫通力ではなく、数の優位が展開できない幅に戦場を絞り、そこへ相手が自分から入るよう仕向けた設計にある。

型:幅の設計
イングランド軍の決定的勝利 読む →