戦略・戦術ラボ Strategy & Tactics
スーツ姿のフアン・プジョル・ガルシアの肖像写真

人物

フアン・プジョル・ガルシア(GARBO)

英国の二重スパイ

生没: 1912–1988

架空の27人を運用し、同じ働きで敵味方の両方から勲章を受けた二重スパイ。

バルセロナの元養鶏場経営者。ナチスを嫌い、最初は英国に協力を断られたためドイツ側に売り込み、行ったこともない英国からの報告を書き始めた。英国が引き取ったあとは27人の架空の下部工作員を運用し、手紙315通と無線500通超で偽の戦闘序列を送り続けた。D-Day直後には「ノルマンディーは陽動だ」と報告している。同じ働きに対してドイツから鉄十字章を、英国からMBEを受けた。

流儀:信じてもらうために、まず正しいことを言う

フアン・プジョルは職業的な諜報員ではない。ナチスが嫌いなバルセロナの元養鶏場経営者で、最初は英国に断られた。そこで彼はドイツ側に自分を売り込み、リスボンに座ったまま、行ったこともない英国からの報告を書き始めた。旅行案内書と映画と雑誌で作った偽の英国である。それが十分に信用されたので、英国側が彼を引き取った。

彼が運用した下部工作員 27 人は全員が架空である。手紙は 315 通、1944年1月からD-Dayまでの無線は 500 通を超える5。嘘の量ではなく、嘘の一貫性が仕事だった。

繰り返し現れる型

01

本当のことを、間に合わない速さで送る

信用は正しい情報でしか作れない。だから本物の情報を、相手が使えない時刻に届けた。正確さと有用さは別の軸である。

02

相手がすでに信じていることを裏づける

新しい考えを植えるより、相手の推理を確認するほうが通る。パ・ド・カレーはドイツ側の推理であって、彼の発明ではない。

03

架空の人格に責任を負わせる

27 人の下部工作員は、報告が外れたときの逃げ道でもあった。誤りは死んだ工作員のせいにできる。

強みと弱み

強み

相手の情報環境そのものを作れる。

弱み

成立には、相手が自分を信じているかを確かめる別の線がいる。それはプジョルの手柄ではなく暗号解読の手柄である。

強み

一貫性を保つ限り、外れた予測すら信用を増やせる。

弱み

一度でも二重性が露見すれば、それまでの全報告が逆向きの証拠になる。

ノルマンディーとの接点

彼は1944年7月にドイツから鉄十字章を、11月に英国からMBEを受けている。同じ働きに対して、両方の国が勲章を出した。これがこの事例の型を一行で表している——欺瞞が成功したとき、相手はまだ自分が正しいと思っている。

フアン・プジョル・ガルシア(暗号名 GARBO)、1940年代、英保安局公開資料より。Public Domain, via Wikimedia Commons

登場する事例