人物
レイモンド・A・スプルーアンス
第16任務部隊指揮官
生没: 1886–1969
確度より時機を選び、攻撃を早く出すことで相手の準備時間を奪った提督。勝ちを広げず、確定させた。
巡洋艦部隊の指揮官から、病に倒れたハルゼーの代役として空母部隊を預かった提督。航空の専門家ではないが、6月4日の朝、敵の位置が確定する前に攻撃隊を発艦させた。この「早く出す」判断が攻撃を分散させ、結果として日本側の飛行甲板を断続的に塞ぎ続けた。四空母を沈めた夜は追撃せず東へ退き、夜戦に強い相手の土俵を避けて勝った状態を確定させた。
流儀――勝ちを確定させる側で判断する
スプルーアンスは航空の専門家ではない。巡洋艦畑の提督が、病に倒れたハルゼーの代わりに空母部隊を預かった。だから彼の判断は、航空戦の勘ではなく、状況の枠組みを見る計算に立っている。
6月4日の朝、彼は敵空母の位置がまだ確定しないうちに攻撃隊を出した。攻撃圏の限界に近く、収容できない機が出ることも織り込んでいた。完全な情報を待って手番を失うより、不完全なまま先に出す。この選択が、日本側の甲板を塞ぎ続ける連鎖の起点になった。
繰り返し現れる型
早く出す
確度が上がるのを待たず、敵が最も脆い時間帯に間に合う側を選ぶ。情報の精度と、間に合うかどうかを天秤にかける。
追撃を止める
4隻を沈めた夜、彼は西へ追わずいったん東へ退いた。夜戦で優る敵の土俵に入らない。勝った状態を守ることを、戦果の上積みより優先した。
任務の枠を出ない
ミッドウェーを守るという任務の範囲で判断し、艦隊決戦の誘惑に乗らない。何を勝ちとするかを、始める前に決めている。
強みと限界
勝った状態を確定させる判断ができる。
戦果の拡大を逃す。のちのフィリピン海海戦でも同じ慎重さが批判された。
専門家でないぶん、通説に縛られない。
航空運用の細部は幕僚に依存する。判断の質は参謀の質に左右される。
ミッドウェーに見る流儀
この会戦での彼の貢献は、命中弾ではなく発艦の時刻にある。早く出したから攻撃は分散し、分散したから断続的に届き、断続的だったから南雲は最後まで甲板を空けられなかった。
レイモンド・A・スプルーアンス。撮影は1944年4月、中部太平洋部隊指揮官のとき。アメリカ海軍公式写真。Public Domain, via Wikimedia Commons
登場する事例