戦略・戦術ラボ Strategy & Tactics
ワシーリー・チュイコフの肖像写真

人物

ワシーリー・チュイコフ

ソ連第62軍司令官(市内の防御)

生没: 1900–1982

戦う距離を選ぶことで相手の装備の優位を無効化した指揮官。細い帯を保持し続けたこと自体が、独第6軍を都市に縛る鎖だった。

市内でヴォルガ川を背にした帯を保持し続けた第62軍の司令官。ドイツ軍の強みである航空支援と砲兵火力は敵味方が離れているときにしか使えない、という一点に着目し、可能な限り敵に密着するよう命じた。数十メートルまで詰めれば、相手は自分の爆撃を自分の頭上に呼ぶことになる。増援が意図的に絞られていることを承知のうえで、最も狭いところで川岸から200メートルほどの帯を保持し続けた。

流儀:相手の強みが届かない距離まで密着する

チュイコフが市内で採った方法は、単なる根性ではない。ドイツ軍の強みは航空支援と砲兵の火力であり、それは味方と敵が離れているときにしか使えない。そこで彼は、可能な限り敵に張り付くよう命じた。数十メートルの距離まで詰めれば、相手は自分の爆撃と砲撃を自分の頭上に呼ぶことになる12。

これは相手の長所を消す土俵づくりである。同じ兵力でも、戦う距離を変えるだけで交換比が変わる。勝てる条件を探すのではなく、相手が強い条件を成立させない。

繰り返し現れる型

01

密着して火力を封じる

航空支援と砲兵は距離を必要とする。距離を消せば、相手の一番強い装備が使えなくなる。

02

小さな単位で戦う

建物単位・部屋単位の戦いに分解し、大部隊の運用を得意とする相手の利点を消す。

03

与えられた分で持ちこたえる

増援が絞られていることを承知で、川岸の帯を保持し続けた。持ちこたえること自体が任務だった。

強みと限界

強み

戦う距離を選ぶことで、装備の差を無効化できる。

限界

その距離では自軍の損害も極端に大きい。市街戦の交換比は、守る側にとっても安くはなかった。

強み

与えられた戦力の範囲で任務を再定義できる。

限界

その再定義は上位の構想(外側での反攻)に依存する。単独では消耗が目的化する。

流儀が見えた場面:スターリングラード

第62軍が保持した帯は、最も狭いところで川岸から 200 メートルほどだった。その細さこそが、独第6軍を都市に縛りつけ続けた鎖である。

ワシーリー・チュイコフ。ソ連国防省。CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

登場する事例