人物
バートラム・ラムゼー
ドーヴァー方面司令官(海軍中将)
生没: 1883–1945
まだ負けていないうちに、負けたときの手順を作っておいた提督。
1938年に予備役へ編入され、戦争が始まってドーヴァー方面の指揮に呼び戻された提督。ダイナモ作戦の準備は撤退が決まるより前、ドイツ機甲が海に達した5月20日に始まっている。彼が設計したのは船の数ではなく手順で、係船用でしかない東防波堤を人間の通路に読み替え、全体の3分の2以上をそこから出した。4年後、同じ海峡でノルマンディー上陸の連合軍海軍を指揮している。
流儀:まだ負けていないうちに、負けたときの手順を作る
ラムゼーは一度海軍を追われた男である。1938年に予備役に編入され、戦争が始まってドーヴァー方面の指揮に呼び戻された。ダイナモ作戦の準備は、撤退が決まるより前に始まっている——ドイツ機甲が海に達した5月20日、彼はドーヴァー城の地下でその会議を開いた12。
彼が設計したのは船の数ではなく手順である。どの港から出るか、どの航路を使うか、どの桟橋に何人を並べるか。浅い浜には大型船が寄れないので、本来は係船用でしかない東防波堤を人間の通路に変えた。結果として全体の3分の2以上、239,555 人がそこから出ている。
繰り返し現れる型
最悪の手順を先に書く
負けると決まる前に、負けたときの段取りを作る。これは悲観ではなく、準備に必要な時間の確保である。
本来の用途でない設備を使う
係船用の防波堤を人の通路にした。足りないのは資源ではなく、資源の読み替えであることが多い。
流量で考える
船の数ではなく「1時間に何人乗せられるか」で設計した。撤退は戦闘ではなく物流の問題である。
強みと弱み
悪い結果を前提にした手順を、平時のうちに作れる。
その手順が要らなかった場合、準備は誰の記録にも残らない。使われなかった備えは評価されない。
設備の用途を読み替えて能力に変えられる。
読み替えは現場が壊れていない間しか効かない。防波堤が爆撃で落ちていれば、この作戦の3分の2は消えていた。
流儀が見えた場面:ダンケルク
この人物は4年後、ノルマンディーの上陸で連合軍の海軍を指揮している。同じ海峡を、同じ人が、逆向きに設計した。降りる手順を作った経験が、上げる手順に使われている。
バートラム・ラムゼー提督、第二次世界大戦期、IWM蔵。Public Domain, via Wikimedia Commons
登場する事例