人物
ウェリントン公アーサー・ウェルズリー
英蘭連合軍司令官
生没: 1769–1852
単独で守り切れる位置ではなく、約束が守られれば勝てる位置を選び、確約を先に取り付けた司令官。
イベリア半島戦争で守勢の戦い方を磨いた指揮官。ワーテルローで彼が選んだ陣地は、背後が森で退路が細く、正面も狭い。単独では説明のつかない位置であり、「持ちこたえれば東からプロイセン軍が来る」という前提の上にしか成立しない。だから彼は陣を敷く前に支援の確約を取っている。守り切れる場所ではなく、約束が守られれば守り切れる場所を選んだ人物である。
流儀:他人の到着を前提に、自分の位置を決める
ウェリントンの陣地選択は、それ単独では説明がつかない。背後はソワーニュの森で、崩れれば退路が細い。正面は 4 キロに満たない狭い稜線。この位置は「持ちこたえれば、東からもう一つの軍が来る」という前提の上にしか成立しない。
だから彼は、陣地を選ぶ前に確約を取っている。前日の夕方、プロイセン側から支援の意思を確認したうえでモン・サン・ジャンに留まると決めた13。「守り切れる場所」ではなく「約束が守られれば守り切れる場所」を選んだ——これがこの人物の設計である。
繰り返し現れる型
合流を前提に位置を取る
単独で守り切る位置ではなく、援軍が来れば勝てる位置を選ぶ。前提が満たされるかを先に確認する。
確約を口約束で済ませない
陣を敷く前に、相手が何をどれだけ出すのかを詰めた。位置の選択は、確約の質に依存する。
見えないところに置く
稜線の裏に兵を下げ、砲撃と観測から隠した。相手に見えているものを、こちらが決める。
勝った日に誇張しない
戦後、彼は自軍の苦戦を隠さなかった。ただしプロイセン軍の寄与の書き方をめぐっては、後年まで論争が残る。
強みと弱点
守勢の地形を読み、耐える形を作るのが巧い。
その形は他人の到着に依存する。約束が破られた瞬間、退路の細さがそのまま弱点になる。
寄せ集めの多国籍軍を一日持たせた。
部隊の質が不揃いなため、攻勢に転じる余力がない。決着は相手の崩れを待つしかない。
流儀が見えた場面:ワーテルロー
彼が耐えた 9 時間は、それ自体が勝利ではない。耐えることが勝利になったのは、東から 48,000 人が来たからである。トラファルガーのネルソンが「連絡が切れても動く」形を作ったのに対し、ウェリントンは「他人が来るまで動かない」形を作った。
トマス・ローレンス『ウェリントン公アーサー・ウェルズリー』1815–16年ごろ、アプスリー・ハウス蔵。会戦の直後に描かれている。Public Domain, via Wikimedia Commons
登場する事例