人物
ゲオルギー・ジューコフ
ソ連軍副最高司令官(反攻の立案)
生没: 1896–1974
目の前の激戦を「決着の場所」ではなく「相手を止めておく場所」として扱えた指揮官。決着は都市の外側に置いた。
ソ連軍の元帥。1942年9月中旬、ヴァシレフスキーとともに、市内の消耗戦を続けながら、はるか外側の側面で反攻して包囲するという構想をスターリンに示した。この構想が成立するには市内へ送る戦力を意図的に絞る必要があり、苦しんでいる場所に予備を入れないという判断を実行した。11月19日に発動した反攻は、都市を一度も攻めずに都市の中の軍を包囲した。
流儀:都市を見ず、側面を見る
ジューコフの特徴は、目の前で起きている激しい戦闘を「勝負がつく場所」ではなく「相手を止めておく場所」として扱えたことにある。9月中旬、彼はヴァシレフスキーとともに、市内の消耗戦を続けながら、はるか外側の側面で反攻するという構想をスターリンに示した12。
この構想が成立するには、市内へ送る戦力を意図的に絞らなければならない。援軍を送れば市街戦は楽になるが、外側で使う手駒が消える。いま苦しんでいる場所に資源を入れないという判断は、感情に逆らう。彼はそれを実行した。
繰り返し現れる型
苦しい場所に増援を入れない
目の前の消耗を止めるために予備を使うと、決着をつけるための予備が消える。どこで決めるかを先に決めておく。
継ぎ目を狙う
相手の最良の部隊ではなく、装備も士気も劣る同盟国軍が守る接続部を突く。強い所を避けるのは臆病ではなく設計である。
準備を隠す
兵力の集結は夜間に、無線は沈黙させて行った。相手が「予備はもう無い」と信じている状態を壊さない。
消耗を投資として計上する
市街戦の損害は敗北の証拠ではなく、相手を釘付けにしておくための支払いだった。ただしその支払いは膨大だった。
強みと弱点
目の前の戦闘と、勝負がつく場所を切り離して考えられる。
その切り離しは、市内で戦う部隊の損害を承知で受け入れることでもある。人命の計算として重い。
相手の思い込み(予備は尽きた)を壊さないまま準備できる。
秘匿は自軍の連携も損なう。準備が漏れれば構想全体が無効になる、一発勝負の性格を持つ。
流儀が見えた場面:スターリングラード
11月19日に始まった反攻は、都市を一度も攻めずに都市の中の軍を包囲した。決着は市内ではなく、4日後に閉じた西方の環で起きた。
ゲオルギー・ジューコフ。グリゴリー・ヴァイル撮影、1944年。Public Domain, via Wikimedia Commons
登場する事例