人物
ゲルト・フォン・ルントシュテット
西方総軍司令官
生没: 1875–1953
正しい方針を持ち、その入力が敵の製品だったために動けなかった司令官。
装甲予備を内陸にまとめ、上陸の本命が判明してから決定的に使うという、軍事的に正しい方針を持っていた。問題は「本命が判明する」という前提のほうが敵に握られていたことである。ノルマンディーは陽動だという報告が入り続ける限り、彼の正しい方針は「まだ動かさない」を出し続けた。正しい規則が偽の入力を受けたときに何が起きるかを示す人物。
流儀:予備は割らない。割らないまま、使えなくなる
ルントシュテットは西方総軍司令官として、装甲予備を内陸にまとめて置き、上陸の本命が判明してから叩くという古典的に正しい方針を持っていた。判明するまでは動かさない、というのがその要点である。
問題は、「判明する」という前提のほうが敵に握られていたことである。ノルマンディーに上がったのは陽動だ、という報告が入り続ければ、彼の方針は「まだ動かさない」を出し続ける。正しい方針が、間違った入力を受けると最悪の出力になる。
繰り返し現れる型
本命が分かるまで予備を割らない
軍事的に正しい。ただし「本命が分かる」という前提が敵の手の内にあるとき、この方針は永久に待ち続ける機械になる。
上位の裁可を待つ
装甲予備の一部は総統の裁可なしに動かせなかった。正しい判断を持っていても、押せるボタンが手元に無い。
強みと限界
戦力の逐次投入を避け、決定的な場所で使おうとする。
決定的な場所の判定を敵に握られていると、逐次投入すらできず、ただ動かないだけになる。
ノルマンディーとの接点
同じ流儀が、4年前にも同じ形で出ている
この人物は本サイトに2度出てくる。1度目はダンケルク、1940年5月である。
A軍集団司令官だった彼は5月24日、海岸へ迫っていた機甲部隊に停止を命じた。理由は今回とほとんど同じ形をしている——戦車の稼働率、戦車に向かない地形、伸びた側面、まだ遠い歩兵。「決定的な場面のために機甲を温存する」。その時点の判断としては筋が通っており、いまも研究者はこれを愚行とは書かない。
だが結果として、英仏軍は防御周辺線を作る時間を得て、33万人が海を渡った。1940年に彼が見誤ったのは判断ではなく、その判断が効く時間の長さである。1944年に見誤ったのは判断の入力だった。
同じ流儀が、違う理由で二度負けている。本サイトが人物ではなく条件を見ると言っているのは、こういう場面のためである。彼の規則そのものは、どちらの年も正しかった。
ゲルト・フォン・ルントシュテット、1945年、ニュルンベルクにて。捕虜となったあとの撮影である。Public Domain, via Wikimedia Commons
登場する事例