人物
レ・ズアン
ベトナム労働党第一書記
生没: 1907–1986
一度の総攻勢に賭け、狙った判定者には届かず、狙っていない判定者に当たって勝った指導者。
1960年代半ば以降、北ベトナムの戦争方針を実質的に握った人物。長期の消耗ではなく一度の総攻勢で決着をつけることを一貫して志向し、テト攻勢=総攻勢・総蜂起を推し進めた。計画は「南ベトナムの住民が蜂起する」という前提の上に立っていたが、蜂起は起きなかった。それでも結果的に勝ったのは、狙っていなかった判定者が判定を出したからである。
流儀:決戦を一度で作ろうとする
ベトナム戦争を指導したのはホー・チ・ミンだと思われがちだが、1960年代半ば以降に戦争の方針を握っていたのは第一書記のレ・ズアンである3。彼の一貫した志向は「長期戦の消耗ではなく、一度の総攻勢で決着をつける」ことだった。
テト攻勢の設計もそこから来ている。全土 100 都市以上を同時に叩けば、南ベトナム政府軍は崩れ、住民は蜂起し、体制は倒れる——総攻勢・総蜂起。この計画は、南ベトナムの住民が判定者になるという前提の上に立っていた。その前提は外れた。
繰り返し現れる型
一撃で決着をつけようとする
消耗の均衡を待たず、一度の総攻勢に賭ける。うまくいけば時間を大幅に短縮できるが、外れたときの損害も一度に来る。
党の統制を先に固める
軍事的に懐疑的な意見(ザップら)を計画から遠ざけたうえで決定した。反対意見を消すと、計画の前提を検算する人もいなくなる。
政治的効果を軍事作戦に組み込む
狙いは領土ではなく体制の崩壊だった。この方向は正しかったが、崩れる体制を取り違えた。
強みと弱み
軍事作戦を政治的な結果のために設計できる。
その政治的な結果を誰が出すのかを間違えると、作戦は当たっても計画は外れる。
大規模で同時的な作戦を統制できる。
一度に張るぶん、外れたときに立て直す予備が残らない。解放戦線は事実上この一戦で使い尽くされた。
流儀が見えた場面:テト攻勢
77,000 人を投じて、狙った蜂起は起きず、45,000 人以上を失った。それでも彼は勝った——狙っていなかった相手が判定を出したからである。
レ・ズアン、1951年。Public Domain, via Wikimedia Commons
登場する事例